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「大阪都構想」と企業変革プロセス

堺市長選で現職が、大阪維新の会推薦の候補を破り再選した。この選挙は「大阪都構想」の是非を巡る選挙でもあったので、ここで維新の会が負けたということは「大阪都構想」そのものの見直しが必要になったとも言えるのではないだろうか。

「大阪都構想」で橋下さんは一体何をしたいのか。この部分がよく見えなかった。これが敗因だと思う。二重行政の解消は今の大阪府と大阪市の関係のままでも解決可能だ。それをわざわざ都にしなければいけない理由がイマイチ市民にはわからない。しかも、伝統のある自治都市「堺」を潰してまでやらなければいけないことなのかというのが、さっぱり見えなかった。

この事例からあきらかなように、あらゆるプロジェクトはそれを成功させることによって「何がどう変わるのか」、それは「当事者をワクワクさせるものなのか」、「熱意を持ち続けるに足る「理念」があるのかどうか」といったことが大切だと思う。

プロジェクトの最初に未来像をしっかりと描き、プロジェクト成功のプロセスとしてどうやるのが最も良いのか、その重要なプロセスを踏まないとあとでとんでもない落とし穴に嵌り込む。

変革プロジェクトの推進方法として「ジョン・コッターの8つの企業変革プロセス」(下記参照)が有名だ。このブログでも何回か紹介したが、このフレームワークを使うと今回の「大阪都構想」の状況がよくわかる。

「大阪都構想」が頓挫しそうな理由は「ジョン・コッターの8つの企業変革プロセス」のうち3番目の「適切なビジョンをつくる」部分での不徹底が原因なのではないだろうか?ここで「心躍るビジョンを掲げる」ということが必要なのだが、「大阪都」というものがみんなのココロに「心躍るビジョン」としてどうも腹に落ちてないというのが原因だと思う。

橋下さんの「変革が必要だ!」という旗のもと、「そうだ必要だ!」と思い込んで、流されてここまで来たものの、ふと我に返ると、本当に「大阪都」が必要なのかということが関係者の間でしっかりと根付いていない。つまり、変革プロセスの第4段階の「変革のビジョンを周知徹底する」までに至っていない。われわれ大阪府民にとってもさっぱり「大阪都」の良さがわからない。つまり「心の底から支持される」内容になっていないということだ。

当然第5段階にも第6段階にも到達していない。第6段階の「短期的な成果」として賞賛されるはずだった民間人校長や民間人区長はあろうことか不祥事の連発で、今後、大阪都になったあとの区長公選制に大いなる不安を感じさせる結果となっている。

結局、それもこれも最初の「心躍るビジョン」がしっかりと共有されていないというのが問題で、もう、はっきり言ってこの「大阪都構想」プロジェクトは失敗プロジェクトになっている。それでもゴリ押ししてやろうというのなら、橋下さんは裸の王様、もしくは独裁者になってしまうことだろう。本当に必要な改革なのであれば、今一度第3段階に戻って「心躍るビジョン」かどうかの再考を行う必要があると思う。

【ジョン・コッターの8つの企業変革プロセス】
  1. 危機意識を高める … 危機意識を高め、問題に対して「何とかしなければ」という話し合いがはじまるようにする。変革を最初からつまずかせる現状不満や不安、怒りを抑える。
  2. 変革推進チームをつくる … 変革を主導できるだけの適性と権限を備えた適切な人材を集める。互いが信頼し合い、結束して行動できるようにする。
  3. 適切なビジョンをつくる … 分析と財務を柱とする計画の立案や予算の策定を行う動きを促す。変革を主導するような「心躍るビジョン」を掲げる。大胆なビジョンを実現するため、変革推進チームが大胆な戦略を描けるようにする。
  4. 変革のビジョンを周知徹底する … 変革によって何を目指すのか、明確で確信が持て、しかも「心に響くメッセージ」を伝える。心の底から支持されるようにすれば、それが行動に反映される。言葉で示し、行動で示し、新しい情報技術を活用するなどして、コミュニケーションのチャネルを整理し、混乱や不信を取り除く。
  5. 従業員の自発的な行動を促す … ビジョンや戦略に心から賛同する人たちの障害になっているものを取り除く。組織の障害とともに心の障害が取り除かれれば、行動が変化する。
  6. 短期的な成果を生む … 短期間で成果を上げて、皮肉や悲観論、懐疑的な見方を封じ込める。これで変革に勢いがつく。目に見える成果、明確な成果、心に訴える成果を生むように心がける。
  7. さらに変革を進める … ビジョンが実現するまで変革の波を次々と起こす。危機意識の低下を容認しない。心の壁など変化の難しい部分を避けてはならない。不要な仕事を削り、変革の途上で燃え尽きるのを防ぐ。
  8. 変革を根付かせる … 行動を企業文化に根付かせることによって、伝統の力で過去に引き戻されるのを防ぎ、新たなやり方を続ける。研修や昇進人事、感情の力を利用して、集団の規範や価値観を強化する。

評価:
ジョン・P・コッター,ホルガー・ラスゲバー
ダイヤモンド社
コメント:企業変革のプロセスを一つの寓話で学べる本

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