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【読書ノート】「ミライの授業」

「14歳のきみたちへ」と題して、中学生に向けた講義集なんだけれど、大人でも知らないことだらけ。5時限分の分量にしては、非常に中身が濃い。学校で毎日こんな授業が展開されれば、きっとすごい人材が輩出されるだろうなあと思いながら読んだ。

 

冒頭で、今の時代はどんどん技術が新しくなり、ロボットやAIに仕事を奪われる時代になってきているけれど、こんな時代に生きていることを不幸な時代だととらえず、未来を次のように考えようと提案している。

未来には、ひとつだけいいところがある。

それは、「未来は、つくることができる」という点だ。

そうだよなと思った。いつの時代にも「未来をつくる人」がいたのだ。だから君たちもそういう「未来をつくる人」になろうと呼びかけている。本の中では、あくまでも若い人たちに呼びかけているけれど、僕みたいに50を超えたおっさんでもまだまだ「未来はつくれる」と思う。実際この本でも取り上げられている伊能忠敬は56歳から蝦夷地の測量に出かけたし、緒方貞子さんは上智大の教授から国連難民高等弁務官に選ばれたのは63歳の時である。カーネルサンダースがケンタッキーフライドチキンをはじめたのは65歳からだ。まだまだ僕も若いのだよと思いながら読み進めた。

 

未来をつくる5つの法則として

法則1 世界を変える旅は「違和感」からはじまる。

法則2 冒険には「地図」が必要だ。

法則3 1行の「ルール」が世界を変える。

法則4 全ての冒険には「影の主役」がいる。

法則5 ミライは「逆風」の向こうにある。

という5つをあげている。

 

この本は上記5つの視点をテーマに、未来を考えるヒントとして20人の偉人を取り上げている。が、単なる偉人伝集になっていないのは、一般的によく知られていることとは少し違う視点で人物を取り上げている点だと思う。

 

例えば、ナイチンゲールは看護士で有名だけれど、本当は特殊な円グラフで兵士たちの死亡原因を主張した「統計学者」だったということとか、ニュートンは中学生の時には学年で下から2番めの成績だったとか、森鴎外は医者としてはダメで陸軍の中の「権威の思い込み」にとらわれていた人だったとか、伊能忠敬の測量は実は地球の大きさを知りたかったからだとか、コペルニクスは地動説をすぐには発表せず30年も経ってから発表したとか、次々と知らないこと、興味をそそるような内容を展開している点がこの本の優れた点だと思う。

 

高校のころそういえばフランシス・ベーコンの4つのイドラ(思い込み)って習ったような気がするが、今もう一度読み返してなるほどと思った。4つのイドラとは、

1 人間の思い込み(種族のイドラ)

… 人間の身体的な特徴や脳のしくみによる思い込み(目の錯覚など)

2 個人の思い込み(洞窟のイドラ)

… 自分の経験や所属している組織の中での思い込み

3 言葉の思い込み(市場のイドラ)

… 伝聞・うわさにまつわる思い込み

4 権威の思い込み(劇場のイドラ)

… 権威のある人や有名人の言葉、テレビなどのニュースなどを信じてしまうこと

こういう思い込みの鎖を断ち切るには「観察と実験」が必要とのこと。それにしてもこれらのことは、今の時代でもぴったり合致していると思う。ワイドショーやフェイクニュースを信じる大人の実に多いこと。老人世代はいまだに昔の常識を現代にあてはめてしまうし、多くの会社は昔の成功体験にしがみついて、自分たちが小さな井戸の中にいることを忘れ、海外の現状に目を向けようとしない。

 

最近、少し考えればわかるようなことを自分の頭で考えようとしない人が増えているような気がする。現代は情報が溢れていて、すぐに検索すればわかるようになって便利なのだけど、ネットに書かれていることが本当なのか?と疑うことも必要だと思う。

 

立命館アジア太平洋大学の学長(ネットライフ生命創業者)の出口治明氏が多くの著作の中で日本人に欠けているのは「リベラル・アーツ」だと書かれている。「リベラル・アーツ」直訳すれば「自由な芸術」であるが、通常下記の「自由7科(セブンリベラルアーツ)」と言われているものがローマ時代末期に成立し、今なお欧米の大学では「教養」の基礎として取り上げられているとのことである。

【3学 (トリウィウム)】言語に関わる3科目

「文法」 (Grammar)

「修辞学」(Rhetoric)

「弁証法(論理学)」(Logic)

【4科 (クワードリウィウム)】 数学にかかわる4科目

「算術」(Arithmetic)

「幾何」(Geometry)

「天文」(Astronomy)

「音楽」 (Music)

この7科の上に「哲学」(Philosophy)があり、さらにその上に「神学」(Theology)がある。神学ってTheologyって言うんですね。セオリー(語源は「じっくり見ること」)なのか…。

物事を考えていく上では、こうしたリベラル・アーツの知識ベースの上に更にベーコンの言う「観察と実験」が必要な気がする。

 

僕自身も、昨年、会社の中でどうも「違和感」を感じて大学院に行ってみようと思ったのは、こういった「教養」が足りないと日に日に感じてきたからだ。でもこういう「他の人と何か違う」という「違和感」を感じるのは大事なことだとこの本にも書かれている。

 

最後の章には「変革者はいつも「新人」である」と書かれている。世代交代のことを述べているのだが、50を過ぎたおっさんでも、いつでも「新人」になれると思う。読書量が足りないのでこれからはもっと本を読み、大学院で得た知識をベースに、これからの時代の変革者になれればなと思う。もちろん著者のように知り得た知識を次世代を担う若者たちに教える立場になれればそれもイイなと思う。

 

そういう意味では、14歳に向けたこの本だけど、どの世代の人が読んでもいいのだと思う。すごく前向きになれた。まだまだ人生は何度でもやり直せるし、いくつになっても未来を創ることはできるのだ。

 

評価:
瀧本 哲史
講談社
¥ 1,620
コメント:14歳に向けたお話。だが、大人でも知らないことだらけ。まだまだ人生これからだよね。

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