カムイ伝講義
2009.10.12 Monday 23:11
白戸三平の本格的なマンガ「カムイ伝」は絵の構成が暗いので今まで避けていた。が、いざ読み始めると引き込まれる面白さがある。その「カムイ伝」を講義している本がこの本だ。冒頭に「日置藩」の設定を高校のときの地元、岸和田藩と仮定しているところに興味があり、立ち読み後、すぐにこの本を買った。カムイ伝を読む限り、なんだか東北地方をイメージしていて、まさかこんな地元の話だとは思えなかったからだ。
地元岸和田だと言われると俄然興味があふれてくる。確かに気の荒さは泉州っぽい感じはするが、岸和田藩は天領にはなっていないのでカムイ伝の設定とは異なる。ただ、海が近いことや5万石という設定が似ているので限りなく近いと著者は語っている。それにしても岸和田と忍者は結びつかないが、甲賀忍者も元々岸和田出身であるのならなんとなくうれしい感じだ。
こうやって歴史を検証して行くと、泉州地域は面白い地域だ。今住んでいる堺も古墳時代から綿々と続く由緒ある場所だし、安土桃山時代には一世を風靡した土地柄だ。そのお隣岸和田も今は祭りだけで有名だけど、江戸時代には5万石の藩としてなりたっていたのだからもう少し歴史検証をすべきだと思う。その南隣の貝塚市などもあまり歴史的には検証されていないけど、地内町として江戸時代に一定の勢力を誇っていたのではないかと思う。一向一揆も関係あるはずだ。この地域は考えてみればすごい地域なのかもしれない。万葉集の時代から実家のある阪南市の箱の浦が歌に詠まれており、土佐日記でも泉州の海岸に立ち寄っている。なんか、歴史物の小説でも書いてみたい気がする。。。
話を戻して、この本の話だけれど、本の題名の通り、法政大学の田中教授は「カムイ伝全集」をもとに講義しているのだそうだ。大学の授業といえば、わけのわからない本を読まされてはテスト前にコピーを一生懸命暗記した記憶しかないが、こんな授業なら喜んで受けたいと思う。マンガを題材に江戸時代を検証するなんてことは普通思いつかない。学生の興味の導入としてマンガを選んだこの教授は本当に偉いと思う。
実際、マンガ「カムイ伝」は読み出すと止まらない。小学館文庫版を今読んでいるのだけれど、もう、めちゃくちゃ面白い。
江戸の文化を町人の視点で見るものは多いけれど、農民や被差別部落の視点で見るものは少ない。圧倒的多数の農民は江戸時代何をし、何を考えていたのかということを考察しながら、現代につながる日本という国の根本をこの本を読みながらもう一度見つめ直したいと思う。